第1章

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永瀬さんが正面のホワイトボードの前に立って僕と松田さんに説明を始めた。 「今回は斉藤くんにも手伝ってもらいます。斉藤くん、体調は大丈夫ですか?」 「はい。大丈夫です。」 良かったと笑顔を見せる松田さんと永瀬さんを見て照れくさくて僕は頭をかく。 「この、数字ですが…解けました。」 「えっ!永瀬君、凄いよ!流石だね。」 僕も数字を見せてもらって考えていたけど見当もつかなかったのに…。すごいな…。 「まあ、たぶん、正解だと思います。ぷっ。何ですか、ふたりして…。尊敬の眼差しはお断りしますよ。」 いや、あれはかなり喜んでいると隣で松田さんが僕に言う。ああ、やっぱり楽しい。そして、ここにいる事がすごく嬉しい。 僕が過去に何をしていたのだろうとか記憶喪失で不安だろうとか余計な事は一切言わない。 まるでずっと一緒に仕事をしてきたかのように接してくれるんだ。 僕が不安に押し潰されそうになっていれば、然り気無く気分を上げるようにしてくれる。 僕の心が見えているかのように、松田さんも永瀬さんも編集長も僕を柔らかく包んでくれるんだ。 特にいつも一緒に仕事をしているこのふたりを見ていると僕もこんな大人になりたいと思う。 あっ…時々…大人げない事をしたりするけど。
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