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その帰り道、俺と永瀬君は、もうすぐ会社という所で蹲っている青年を見つけた。
知らんぷりするわけにもいかず、声をかける。
「君、どうしたんですか?大丈夫ですか?」
顔を上げると俺と永瀬君を見た。
「あ…。ここは…どこですか…?僕…は…誰…?」
「「えっ!」」
永瀬君と顔を見合わせて…また青年を見た。
「あ…っと、君は自分が誰だかわからないのですか?」
「あぁぁ…。何も…わからない…。」
頭を抱えて蹲る青年に、俺と永瀬君は困った。
取り敢えず、会社に連れて行った。編集長の指示で警察に連絡し、余計な事を聞き出したりしない方がいいと判断し警官に来てくれるようお願いして来るのを待った。
暫くすると警官がふたりで会社に来た。顔見知りだった。
「すみません。交番に連れて行こうと言っても動かないものですから…。」
「いえ。それで、こちらの方ですか?」
「はい。名前はわからないそうです。」
「そうですか。我々が保護します。君、一緒に行こう。」
警官のひとりが手を出すと…。
なんと!何と!事もあろうに、その青年は俺の背中に隠れた!
えっ?…君…何してるの?
「ちょっと、君。先生の後ろに何で隠れるんですか。」
「……。」
無言で俺の服を握りしめる…。
えーっ!だから…君…。
どうやら警官と行きたくないようだ…。
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