第1章

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鍵は…あった。鍵って鞄に入れたりポケットに入れたりでしょっちゅう見失うんだよね。いっそかけたくないんだけど女子高生の一人暮らし。鍵無し生活はダッフルコートでサハラ砂漠を全力疾走するような物だ。 お手伝いさんとか、欲しいな。 憧れの上京。名の知れた高校に入学。一人暮らし。最初は張り切ってやった自炊も3ヶ月たった今じゃコンビニ愛好家。増える体重、荒れる肌、ゴキブリと友達。 あぁ、兄さんの真似して上京なんかするんじゃなかった。何で兄さんは上手く暮らせてるんだ。同じマンションの隣同士で何だこの差は! そういえば最近会ってないな。今度顔見に行こう。 ダメだ、ため息しか出ない。小金持ちの両親のせいで私こんなダメ人間になったんだわ。親のスネはまるでチョコレート…あ!買ったチョコ食べなきゃ! 「美味い」 思わず独り言が出るほど美味い!ヤバい!もう他のチョコ食べれないや。食べるけど。 二個目を口に入れようとした時、チャイムが鳴った。お客さんなんて珍しい。集金の時期じゃないし、兄さんかな? 「はい?」 「初めまして主様!!今日から宜しく御願いします!!」 ………は。 「えっと、人違いだと思いますよ」 「そんなことはありません!貴方は私の主様です!」 なんだこの可愛らしい顔した青年は。何で全身赤色ジャージ。しかも全締め。年上…だよね。 うわぁ、都会怖い。 「宗教なら間に合ってます」 「宗教?小春様は宗教には無所属のはずですよ!」 え。 なんでこいつ私の名前知ってるの。 「あんた、なに?」 「チョコのオマケです!」 チョコのオマケ?あれ、なんかどっかで聞いた中二病発言…あぁ、屋台のオッサンだ!もしかしてアレが言ってた『従順』だかってコレのこと? ということはさっき食べたチョコのオマケが、この赤ジャージ。 …ちょ、いやいやいや、なんというスイーツ。いくらなんでもないないない。新手の詐欺かコンチクショウ。チョコ詐欺だわチョコ詐欺。詐欺とわかれば追い返す!
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