2 シグナル女 ルイ

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その夜の走りは最悪だった。 まずメンバーが集まる前に、トモキが痺れをきらして出発してしまい、 慌てて幹部と、他のメンバー3人で追いかける羽目になった。 ところが、途中でスコールのような大雨に襲われ、 仕方なく雨宿りに寄った廃屋で一息つく。 哲郎が、濡れて不快になったジャケットを脱いで絞っていれば、トモキが濡れた髪もそのままでやって来た。 体にしっとりとまとわりつく特攻服を、邪魔くさそうにさばいているので、 「おい、風邪をひくぞ」 と、自分のタオルを差し出してやれば、トモキはそれを受け取ることもしない。 それよりもと、 「なあ、あれ、アンジュよりも良かったか?」 聞いてきた。 最初、誰のことを言われたのか、わからなかった。 トモキは唇の端をあげ、ニヤリと笑う。 「見たぜ。赤い髪の女だよ。フォアに乗せてよー。いつの間に知り合ったんだ?」 ようやく、ルイを送って行った、昨夜のことだと思い当たった。 「アンジュの代わりがアレかよ。ツマンネー女選んでんじゃねーよ」 哲郎は、腹に、溶けた鉛を流されたような熱さを覚えた。 他の誰に言われても聞き流せるが、トモキにだけは触れられたくない。 トモキに見えないように握りしめた拳には、青い血管が浮く。 「……お前には、関係ない」 言おうとした瞬間、  ――窓ガラスが割れた。 「なんだぁ?」 ふいをつかれて、メンバーが驚きの声をあげる。 そこには、 「おらぁ、バクオン! 覚悟しやがれ!」 表に止めた、トモキのゼファーを見つけて集まったのだろう。 手に鉄パイプなどを握った男たちが、ドア、窓かまわず乗り込んできた。
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