2 シグナル女 ルイ

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この夜は、哲郎の警戒が甘かった。 油断もあった。 今夜のバクオンは、幹部の4人と、メンバー3人しかいない。 どしゃぶりの雨の中、外への見張りも立たせなかった。 窓際の仲間が、鉄パイプで頭を打たれた。 建物に侵入してきた敵は、30人を越えている。 「テメーら、バクオンなめてんのか! あぁ?」 配下をやられて、トモキは雄叫びをあげる。 しかし、敵はトモキ以上の勢いを持って、金属バットを振りかぶり、襲いかかってきた。 哲郎はとっさにトモキの前に立ちふさがった。 頭をとられたら、チームは終わりだ。 トモキを庇い、われ先にトモキに襲いかかる男の金属バットを、右腕で受け止める。 哲郎の背中で、敵の視界から姿を消したトモキは、 哲郎の腰を巻くように足を伸ばして、靴のつま先を男の脇腹に突っ込んだ。 強烈なひと蹴りで男をふっ飛ばして、哲郎に向き直り、バットの打撃を受けた哲郎の右腕をつかむ。 「グッ」 握り締めるトモキの腕力に、思わず呻きが漏れた。 「余計なことしてんな、このクソバカ野郎がっ!」 トモキは舌打ちして、放り投げるように、哲郎の腕を捨てた。 痛めた腕を庇うように、哲郎の右側に立つ。 トモキと哲郎の周りを、20人あまりの敵がとり囲んでいく。 それに視線をめぐらせながら、 「負けんなよテツ」 哲郎に聞こえるだけの、小声でささやいた。 「おれ以外の誰にも、やられんな」
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