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この夜は、哲郎の警戒が甘かった。
油断もあった。
今夜のバクオンは、幹部の4人と、メンバー3人しかいない。
どしゃぶりの雨の中、外への見張りも立たせなかった。
窓際の仲間が、鉄パイプで頭を打たれた。
建物に侵入してきた敵は、30人を越えている。
「テメーら、バクオンなめてんのか! あぁ?」
配下をやられて、トモキは雄叫びをあげる。
しかし、敵はトモキ以上の勢いを持って、金属バットを振りかぶり、襲いかかってきた。
哲郎はとっさにトモキの前に立ちふさがった。
頭をとられたら、チームは終わりだ。
トモキを庇い、われ先にトモキに襲いかかる男の金属バットを、右腕で受け止める。
哲郎の背中で、敵の視界から姿を消したトモキは、
哲郎の腰を巻くように足を伸ばして、靴のつま先を男の脇腹に突っ込んだ。
強烈なひと蹴りで男をふっ飛ばして、哲郎に向き直り、バットの打撃を受けた哲郎の右腕をつかむ。
「グッ」
握り締めるトモキの腕力に、思わず呻きが漏れた。
「余計なことしてんな、このクソバカ野郎がっ!」
トモキは舌打ちして、放り投げるように、哲郎の腕を捨てた。
痛めた腕を庇うように、哲郎の右側に立つ。
トモキと哲郎の周りを、20人あまりの敵がとり囲んでいく。
それに視線をめぐらせながら、
「負けんなよテツ」
哲郎に聞こえるだけの、小声でささやいた。
「おれ以外の誰にも、やられんな」
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