16人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
圧倒的に多い敵のど真ん中で、トモキと哲郎は向かい合って立っている。
いまにも噛み付き合わんばかりの睨みあいだ。
これを隙と見て、トモキの後ろから鉄パイプが振り下ろされた。
トモキは微動だにしない。
哲郎は、とっさにトモキの肩をつかみ、トモキを脇に退け、自分の頭を鉄パイプの下に差し出した。
額の真ん中の、一番硬いところで鉄パイプを受ける。
額が割れ、ドロリとした熱いものが、眉間を伝った。
ダメージはさほどではないが、目の前が赤く染まり、視界が無くなる。
「くそっ!」
哲郎は踏み出し、痛めた右腕をめくらめっぽうに振り回した。
拳ではなく、前腕が敵の胴にヒットして、目が覚めるほどの衝撃が哲郎を襲う。
痛めた腕を、自分で壊した。
哲郎は頭を振って、額からの血を辺りに散らした。
誰に向けるべきかわからない苛立ちが、腹の底から湧いてくる。
「おれはお前に助けてもらうつもりはない。おれはお前の庇護を求めて側にいるわけじゃないんだ!」
最初のコメントを投稿しよう!