2 シグナル女 ルイ

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哲郎は、手当たり次第に襲いくる敵を、片っ端から薙ぎ払った。 しかし多人数に囲まれれば、髪を掴まれ、力任せに引き落とされる。 顎を、つま先で蹴りあげられた。 背中から踵を落とされ、地に両手をついて這いつくばされた。 トモキは、黙って、それを見ている。 戦闘の中心を哲郎に譲り、ひとり壁際に立って、無抵抗を示すように腕を組んでいた。 おそらく、今襲われれば、文字通り、手が出ない。 哲郎は、寝そべった体勢から、足のばねで体当たりのような頭突きを入れた。 囲みを破って、台風のような回し蹴りで、周囲を圧倒する。 背後に殺気を感じて、視認もせずに拳を突っ込んだ。 掴みかかられたら、後頭部をぶつけた。 鼻血を噴いて下がったところを、反転して殴り飛ばす。 「ガアッ!」 牙をむき出し、力任せに、ただ破壊する。 容赦のない哲郎の拳は、圧倒的な『強さ』という、恐怖を敵に与えた。 人も物も破壊し、わかりやすい『痛み』で、相手の心を挫く。 今のままだと哲郎はいずれ、 ――トモキに飲みこまれる―― そう思った。 こうやって、いっそのこと何もかも壊してしまおうか――。
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