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哲郎は、手当たり次第に襲いくる敵を、片っ端から薙ぎ払った。
しかし多人数に囲まれれば、髪を掴まれ、力任せに引き落とされる。
顎を、つま先で蹴りあげられた。
背中から踵を落とされ、地に両手をついて這いつくばされた。
トモキは、黙って、それを見ている。
戦闘の中心を哲郎に譲り、ひとり壁際に立って、無抵抗を示すように腕を組んでいた。
おそらく、今襲われれば、文字通り、手が出ない。
哲郎は、寝そべった体勢から、足のばねで体当たりのような頭突きを入れた。
囲みを破って、台風のような回し蹴りで、周囲を圧倒する。
背後に殺気を感じて、視認もせずに拳を突っ込んだ。
掴みかかられたら、後頭部をぶつけた。
鼻血を噴いて下がったところを、反転して殴り飛ばす。
「ガアッ!」
牙をむき出し、力任せに、ただ破壊する。
容赦のない哲郎の拳は、圧倒的な『強さ』という、恐怖を敵に与えた。
人も物も破壊し、わかりやすい『痛み』で、相手の心を挫く。
今のままだと哲郎はいずれ、
――トモキに飲みこまれる――
そう思った。
こうやって、いっそのこと何もかも壊してしまおうか――。
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