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トモキの駆るゼファーのテールランプが、哲郎のフォアのずいぶん前を走っていく。
哲郎は右に左に峠を駆ける、その光を見失わないだけで精一杯だ。
ひとつ先のコーナーを、光の尾をひいて消えていくトモキのバックライトを見ながら、
自分も目一杯ハングオンして抜けていく。
トモキのラインをトレースしても、まったくスピードがあがらない。
なぜこんな無茶なライン取りであんなにも早いのか、さっぱり理解できない。
だが、特攻隊長の橋元だけが、トモキのすぐ後を、正確なコーナーワークで駆け抜けていく。
その単車のテクニックは、さすがで、どうやっても橋元には適わない。
このふたりに哲郎は、いつも置いていかれる。
単車は排気量が同じなら、ガタイが小さい方が有利だ。
そればかりが理由ではないのだが、悔しいので、哲郎は絶対に認めない。
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