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ホテルにバイクを滑り込ませて、部屋にあがり、
血で濡れたシャツを脱いだ哲郎を見て、
ルイは悲鳴を堪えるように口を押さえた。
「テツロウ。あんた傷だらけよ」
敵に散々にやられた後、ここに直行だ。
「手当もしてないの?」
ルイが、具合を確かめようと伸ばしてきた手を、哲郎は反射で振り払う。
ルイは、驚くほど呆気なく、床に尻もちをついた。
「――おれに、触るな」
哲郎は普通に言ったつもりだが、ルイは真っ青になった。
喰われる小動物の目で、哲郎を見上げている。
戦闘の直後だからか、血の滾りが鎮まっていない。
引き起こしてやろうと手を出せば、ルイの体がピクンと震えた。
……哲郎に脅えている。
「悪かった」
ルイに詫びて、動く方の左手で自分の顔を、見せないようにした。
そこに生えているのは、牙なのか角なのか。
ルイの脅えた目が、たまらなかった。
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