2 シグナル女 ルイ

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ホテルにバイクを滑り込ませて、部屋にあがり、 血で濡れたシャツを脱いだ哲郎を見て、 ルイは悲鳴を堪えるように口を押さえた。 「テツロウ。あんた傷だらけよ」 敵に散々にやられた後、ここに直行だ。 「手当もしてないの?」 ルイが、具合を確かめようと伸ばしてきた手を、哲郎は反射で振り払う。 ルイは、驚くほど呆気なく、床に尻もちをついた。 「――おれに、触るな」 哲郎は普通に言ったつもりだが、ルイは真っ青になった。 喰われる小動物の目で、哲郎を見上げている。 戦闘の直後だからか、血の滾りが鎮まっていない。 引き起こしてやろうと手を出せば、ルイの体がピクンと震えた。  ……哲郎に脅えている。 「悪かった」 ルイに詫びて、動く方の左手で自分の顔を、見せないようにした。 そこに生えているのは、牙なのか角なのか。 ルイの脅えた目が、たまらなかった。
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