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「イヤだ。テツロウ、許して……」
ルイが懇願すればするほど、哲郎は昂っていく。
顔は変わらず無表情だが、その体には如実に表れ始める。
無数についた打撲痕が、赤く黒く色づき、染まり、哲郎のたくましい体に浮かび上がる。
傷からはまた出血が始まり、汗と入り混じって、玉となり、ルイの体を赤く染めていく。
「……イヤだ。怖い……」
声を荒げているわけでもなく、
刃物を向けているわけでもないのに、
ルイは本気で脅えていた。
しかし哲郎の血は、ルイの体をまさぐる、潤滑油の役割を果たす。
さほどの抵抗もなく、哲郎はルイの中に収まった。
気持ちとは裏腹に受け入れてしまった己の体に驚いて、
ルイは哲郎の腕の中で悲鳴をあげた。
だが、濃厚な血の臭いと、止むことのない哲郎の執拗な責めに、
ついに自分を放棄する。
「……ああ」
初めて耳にする悩ましげな声は、哲郎の冷めた心に火を入れた。
哲郎はルイを責め続けながら、唇の端をあげる。
そこに白い牙を見たのは、錯覚だろうか。
人は些細なきっかけで、己の中の本性を解放する。
哲郎の中に潜む『鬼』が目覚めたのは、一体、いつだったのだろう。
ルイの体をゆすりながら、哲郎は、己の中の鬼と向き合っていた。
そいつは獰猛に冷徹に、哲郎を誘っている。
ルイでは、まったく物足りないのだと、
哲郎の中で解放を待ちながら、唸り続けている。
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