2 シグナル女 ルイ

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「イヤだ。テツロウ、許して……」 ルイが懇願すればするほど、哲郎は昂っていく。 顔は変わらず無表情だが、その体には如実に表れ始める。 無数についた打撲痕が、赤く黒く色づき、染まり、哲郎のたくましい体に浮かび上がる。 傷からはまた出血が始まり、汗と入り混じって、玉となり、ルイの体を赤く染めていく。 「……イヤだ。怖い……」 声を荒げているわけでもなく、 刃物を向けているわけでもないのに、 ルイは本気で脅えていた。 しかし哲郎の血は、ルイの体をまさぐる、潤滑油の役割を果たす。 さほどの抵抗もなく、哲郎はルイの中に収まった。 気持ちとは裏腹に受け入れてしまった己の体に驚いて、 ルイは哲郎の腕の中で悲鳴をあげた。 だが、濃厚な血の臭いと、止むことのない哲郎の執拗な責めに、 ついに自分を放棄する。 「……ああ」 初めて耳にする悩ましげな声は、哲郎の冷めた心に火を入れた。 哲郎はルイを責め続けながら、唇の端をあげる。 そこに白い牙を見たのは、錯覚だろうか。 人は些細なきっかけで、己の中の本性を解放する。 哲郎の中に潜む『鬼』が目覚めたのは、一体、いつだったのだろう。 ルイの体をゆすりながら、哲郎は、己の中の鬼と向き合っていた。 そいつは獰猛に冷徹に、哲郎を誘っている。 ルイでは、まったく物足りないのだと、 哲郎の中で解放を待ちながら、唸り続けている。
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