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シャワーで体中についた血を落とし、哲郎はソファーに座って、自分で傷の手当てをした。
家が道場だから、怪我の手当てには慣れている。
ルイは、疲れた様子でベッドに横たわっていた。
その背中を見ながら、ため息をついた。
思い通りにルイを抱いてみても、湧き上がる飢餓感を自覚しただけだ。
やはりルイでは、
……満たされない。
眠っていると思っていたルイが、体をゴロリと転がして、うつ伏せになり頬杖をついた。
「ねえ」
上目遣いで哲郎を見上げてくる。
「いつ、羽月を殺ってくれるの?」
強い者に媚び、すがる目だ。
トモキを前にすると、誰しもがこんな目をする。
ルイの目から視線をそらせば、赤い唇が、まるで別の生き物のように蠢いていた。
「バクオンは『白』がいらないの?」
哲郎は、甘美な毒を盛られた気分になった。
ルイは単純に、チームカラーの『白』をいらないのかと問うたはずだ。
けれど哲郎は、バクオンにはトモキが『必要なのか?』と聞いた。
哲郎の中の鬼が、一声、咆哮をあげる。
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