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しばらく哲郎は、じっと目を閉じていた。
そしてゆっくりと体を起こし、赤く染まったルイを見る。
「お前は、羽月を殺して欲しいんだろう」
己の中の鬼が命じるままに、力を振るうことは、いつだってできる。
だが、おめおめと、鬼に従うのも癪だ。
哲郎がすべて壊すのは、もう少し先でもいい。
それは、誰への言い訳なのか、それとも本心の望みなのかは、わからなかったが……。
だが、
『何もかも終わらせてから』
は、ひとつの区切りになるはずだ。
哲郎は、ルイに、
「約束は果たそう」
応えてやった。
「狂乱虎兎も羽月も、お前が望むのならば、おれが全部壊そう」
ルイは不安な瞳で、哲郎を見上げてきた。
「……全部って?」
「ああ。全部だ」
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