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ようやくトモキが単車を止めた。
峠の展望台に、爆音神のメンバーが次々と追いついてくる。
爆音神の特攻服の色は、黒だ。
黒地に血の結束を示す、真紅の文字で『爆音神』の名を背負っている。
その中で唯一、総長の座を示す白い特攻服をまとうのが、宇城トモキ。
スタンドをかけた愛車のゼファーに跨り、黒い集団の中で、ひとりだけ、頭ひとつ抜き出している。
そんなトモキの正面には、特攻隊長の橋元が、咥え煙草で立っている。
脇には親衛隊長、五十嵐が、ふたりの話す内容に、愛想よく相槌をうっていた。
トモキ、橋元、五十嵐の三人の周りを、爆音神の隊員たちが、彼らの身を守るように取り巻いている。
しかし、見るからに、真っ黒な集団の
『暴走族』
の中に、おいそれと刺客など近づけるわけもない。
日下哲郎は、少し離れた位置に愛車のフォアを止め、ひとり、その様子を眺めていた。
哲郎の服装は、深緑のシャツにジーンズ。
単車で走る時は、この上からウインドジャケットを羽織る。
爆音神の特攻服でないのは、この場では哲郎ひとりだ。
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