1 獣の王 トモキ

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その時、トモキがふと顔をあげて、 「テツゥ!」 気まぐれのように、名を呼ばわった。 その声につられて、隊員たちが振り返って哲郎を見る。 そして、 「――テツローさん、いたんですかっ!」 驚きの声をあげ、一斉に踵を合わせて敬礼した。 まるで軍隊だ。 「あんだよーおめーら。鬼の副長には、まとめてお利口さんじゃねーか」 橋元がおかしそうに笑う。 橋元の言うとおり、特攻服こそ着ていないが、哲郎は、チーム『爆音神』の副長だ。 だが、トモキから一方的に、 「テツ、お前はおれのチームだろ?」 と言われて、 「ああ」 と答えただけだ。 ――暴走族の副長―― そんな立場を、哲郎は、引き受けた覚えはない。 だからトモキに渡された特攻服も、クローゼットの奥深くに仕舞いこんだままだ。 トモキは、それが気にいらないらしい。 「テツおめー、なんでバクオンの名前、背負わねーんだ?」
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