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抗争ともなれば、トモキはまるで火柱となる。
白い特攻服をひるがえし、戦闘のど真ん中に、頭から突っ込んで行く。
黒の集団の中で、トモキの『白』はひときわ目立った。
だからこそ標的にもなりやすいのだが、これ幸いとトモキは、襲い掛かってくる敵を、嬉々として迎え撃った。
トモキの右拳は、容赦なく敵の頬を張り、勢いを殺さないまま半回転して、回し蹴りで、辺りを一蹴する。
逆から来たのには、後ろも見ずに肘を突っ込んだ。
チームの先陣を切り、誰よりも激しく暴れまわる。
抗争の中を、縦横無尽に跳び回るトモキの姿は、まるで暴力の神だ。
混乱の中、もう敵を視認している余裕などない。
研ぎ澄まされた戦闘能力だけで、敵の攻撃をかわし、打ちのめしていく。
風にひるがえるトモキの特攻服は、返り血が赤々と散り、禍々しいほど鮮やかに夜の闇に映えた。
充満する血の臭いに、トモキは狂ったような笑い声をあげ、
敵の悲鳴に、ますます我を忘れて、拳を振り回し、敵をなぎ払っていく。
その強さは、敵ばかりではなく、味方をも震え上がらせた。
あまりにも強すぎると、凡人はそこに狂気を見る。
だから、
「もうよせ。勝負はついた」
哲郎は、肩を掴んで、トモキを止める。
しかしトモキは、振り返りざま、哲郎にまで拳を振り上げてきた。
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