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2 シグナル女 ルイ
そんな哲郎の前に、
赤い髪にショッキングイエローのチューブトップ、デニムの短パンを履いた女が現れた。
女はルイと名乗り、
「あんたが、バクオンの鬼のテツロウ? 噂より地味ね」
と言った。
まるで信号機のような女と比べれば、誰でも地味に見えるだろうと思いながら、哲郎はルイを無視する。
正体不明の女に関わるほど、暇ではないし、誰かれかまわずの誘いに乗るほど、女に飢えているわけでもない。
何人かの女を抱いてみたが、誰もアンジュの代わりにはならなかった。
哲郎の胸に淀んだ澱が晴れるのは、時間を待つしかないのだろう。
しかし、
「ねえテツロウ、男をひとり、殺ってくれない?」
ルイの言葉が、立ち去ろうとする哲郎の背中に降る。
「報酬は、チームカラーの『白』と、アタシよ」
それがまるで珠玉の宝石のように言うルイに、少しだけ興味が沸いた。
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