第1章

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「あなたは、現在2つのルートを選べます」 夢の中に出てきた、可愛らしい女の子は私に言った。 「1つ。このまま、職場でいじめられて、デブ、ブス、キモイ、などと言われ、虐げられて一生を終える」 なに、それって一生って決まってるの。確かに、私は幼稚園からそういわれてきたけど。 辛い、辛すぎる。 「2つ。こことは全く別の場所で、別人として生きていく。でも、そこがどんなところかは選べない」 ん?どういうこと? 「わかりやすく言うと、そこは戦争中かもしれないし、花街の前かもしれない。そうしたらあなたは娼婦確定だね。あるいは監獄の中かもしれないし、海の真っただ中かもしれない」 うわー。きっつ。なにそれ。 「でも、もしかしたら、運よくいいところに行って、運よく拾われて、運よく言葉が通じて、運よくいい暮らしができるかもしれない。これだけは保証する、っていうのは、顔は変えないけど、痩せさせてあげる。そして、ちゃーんと前の記憶も、心から望めば返してあげるよ。どうする?」 なんか、とっても微妙な選択肢だな…。 「ちなみに考える時間はあと…1分。さっさと選ばないと、あなたはこれまで以上に酷い扱いを受けることになるよ。どうしたい??」 彼女はそういうと、にこっと笑って懐中時計を取り出した。 どこかのテレビ番組よろしく、段々と秒針が回っていく。 もちろん、針は1つしかない。 とても魅力的な話だと思う。でも、リスクが大きすぎる。 今の日本の、便利な生活に慣れてしまった私が、いくら虐げられているとはいえ、普通に生きていれば安全な生活を送っている私が、耐えられるのだろうか。 万が一、とんでもないところへ行ってしまったとして。 「あと15秒だよ」 ああ。どっちに行っても後悔しそう。 「10、9、8、7「あああああ!!わかった、行くから!!!!」 なぜかわからないけれど、そう答えてしまった。 「わっかりましたー♪では、また、ご縁があったらお会いしましょー。じゃあね♪」 答えた瞬間、彼女は笑顔になって、どこかのテーマパークで、アトラクションに乗るときみたいな笑顔で手を振って。 急激に落ちていく感覚がして。 やっぱり私は選択を間違えたのか。 最悪だ…この世の終わりだ… と薄れゆく意識の中で思った。
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