第2章 マーティン・ルーサー・キングJr.デー

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「まったく……、なんだってこんな事に……」 哲郎の口からは愚痴しか出ない。 別口で購入したチケットのお陰で、3人はあっという間に搭乗口まで案内され、アトラクションの名前や内容を、これっぽっちも理解する前に、コースターに乗せられてしまった。 そして、最近のジェットコースターのシートベルトとは、こんなにチャチなものなのか? 前から倒れてきたプラスティックのテーブルで、腿を押さえて身体を支えるだけらしい。 アンを間に挟んで座ったトモキや哲郎のでかい身体は、シートから上にずいぶんとはみ出していて、バランスの悪いことこの上ないというのに、キャラクターの軽い合図と共に、コースターはゆっくりと動き出した。 「Hhyaaaaa!」 アンの度胸はたいしたものだ。 それはもう哲郎が感心せざるおえないほどだ。 あれだけトモキのバイクに振り回されてきたはずなのに、これは平気なのか今度は嬉々とした悲鳴をあげている。 そしてトモキの環境順応速度にも感心した。 「オワァァァ!」 アンと一緒になって声をあげ、つかまる場所もないので両手をばんざいのようにあげて喜んでいる。 「ギャハハハハ!」 何が可笑しいのか大口あけて笑いながら、コースターの浮遊感を楽しんでいる。 トモキ……。 お前、そんなやつだったのか?
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