第2章 マーティン・ルーサー・キングJr.デー

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たった3分間ほどの時間だが、なんだかぐったりと疲れた哲郎の腕をとって、アンは引きずるようにして、次のアトラクションへと誘った。 トモキはにやにやしながら、後ろから歩いてくる。 ……あいつ、後で絶対に殺してやる。 アンはずっと、こんな調子だ。 王女なら王女らしく、もう少し大人しいアトラクションに興味を示せばいいのに、次から次へと絶叫系ばかりを梯子していく。 「なんだよテツ、おめー実は、絶叫マシンが苦手なのか」 アンがコースターに乗るための列に並びながら、これからのアトラクションを予想させるディスプレイに気を取られている隙をぬって、トモキは気分良さげに哲郎の肩に腕を回してきた。 「いや別に……。お前があまりにもガキなもので、いささか驚いただけだ」 哲郎はシレッと言う。 意地でも認めてやるものか。 「苦手だからって、気付いてねぇわけはねえよな」 トモキは哲郎の皮肉をまったく無視して、小声で言った。 哲郎も顔をうつむかせ、ささやくようにして答える。 「……ああ、わかってる」 間違いなく、アンの後をつけ狙う不穏な人影。 人目の多い人気アトラクションの中では、さすがに仕掛けてくる様子はないが、はっきりと姿も見せない相手にずっと行動を見張られ続けるのは、哲郎にとっても気分の良いものではない。 「あいつ絡みなんだろ?」 トモキは顎をしゃくってアンを指す。 「ああ、そうだ」 トモキに隠してもしょうがないので、正直に認める。 「……なるほどね」 トモキの瞳が凶暴な光で彩られ始めた。
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