第3章 プレジデントデー

2/16
前へ
/92ページ
次へ
店内には騒々しいロックが流れていて、インテリアもラフでワイルドなアメリカの生活を模倣してある。 アンは若干戸惑い気味にキョロキョロしていたが、文句も言わず、哲郎が運んだハンバーガーを素直に口にした。 「で、何人だった?」 トモキがバーガーを買う列に並ばずに、アンと一緒に席で待っていたのは、なにも哲郎をパシリに使ったわけではない。 「ふたりずつ2組の計4人。おれたちを中に挟んで座ってる。ま、たいしたやつじゃなさそーだけど、物騒なもんは持ってるな」 ハンバーガーを買う哲郎の動きに、注意を払う人間の場所を、トモキに確認してもらった。 ちょうどアンを頂点にして、不格好な三角形の位置で座っていると言う。 「こっちはふたりだ。入り口で張っていた」 アンとトモキを不自然に注目している人間を、哲郎は店内を動いて確認した。 この店は、ただっ広く、仕切りも、太い柱も無いので、身を隠せるスペースが少ない。 その上に、周りを囲む壁はガラス張りで、うかつに外から見張ろうとすれば悪目立ちする。 都合のいいことに、出入り口も4か所あった。 入り口で車を見るフリをして、距離を取りながらこちらを覗うふたり組を除いては、客を装い姿をさらすしか方法はない。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加