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こうなれば、単車の小回りを活かそうと、碁盤の目に並んだ街道を細かく進路変更する。
目一杯ハングオンして、道路を切り裂くように曲がっていく。
直線が見えた瞬間にあけるアクセル音が、
――ギャァン――
と響く。
あまり広くもない道を、右に左に疾走し、誰かの家の軒先ギリギリを通過し、野良犬の鼻先を、単車のタイヤがかすめていく。
さすがにこの爆走には、セダンは追いつけない。
少しの間なら二台の単車を、車の視界から外すことに成功した。
角を曲がったところで、トモキは、先に行けと哲郎に合図をして、一旦止まり、
前輪にロックをかけ、後輪だけにパワーを伝えて、単車をずらしてＵターンさせる。
何をするつもりだと振り返ると、そのままエンジンを噴かして、後を追って現れたセダンに突っ込んでいった。
狭い路地で、スピードはさほど出ていないが、それでも人なら確実に跳ね飛ばせる相手に、トモキは迷いなく飛び込んでいく。
セダンと正面衝突した！
と思ったら、トモキのフロントが弾むように持ち上がった。
トモキは、わざとセダンのバンパーにフロントタイヤをぶつけて、体重移動とアクセルワークで、ゼファーごと車の上に乗りあげた。
――ステアケース！
もう一発！
まるでオフロードバイクで行うようなテクニックを、トモキはゼファーで魅せつける。
あいつ、いつの間に……。
トモキのゼファーは、一気にセダンの屋根まで乗りあげ、ついでに後輪で車のフロントガラスをヒビだらけにして、敵の視界を潰すと、後方へと舞い降りる。
トモキは振り返って、一瞬だけ哲郎に自慢げな笑顔を向けて、逆方向へ疾走していった。
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