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哲郎が走らせるバイクの後ろで、アンはぎゅっと哲郎の背中にしがみついている。
哲郎の腹に回された腕は、よく見れば振動とは違うリズムで震えている。
これ以上、バイクのバックシートに、アンは耐えられそうにない。
哲郎の後ろには、まだ一台、黒いセダンが張り付いている。
そこにトモキがブレーキを鳴らして、脇道から突っ込んできた。
哲郎の横に並んで走る。
「しつけー。もう一回、潰してやんなきゃダメか?」
だが哲郎は首を振った。
「ダメだ。これ以上は、こいつがもたない」
アンの様子をトモキも認めると、トモキはちょっと考えこむように上を向いて、
「おっしゃ、ついて来い」
と哲郎の前に出て先導した。
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