第4章 メモリアルデー

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アンでも耐えられるぐらいのスピードで、まっすぐにバイクを走らせていると、 また歩道に戻る坂道の途中で、トモキがバイクを止めて待っていた。 「あいつらは?」 と聞くと、 「渋滞につかまってる」 と、すぐそこが有名な観光寺の入り口なんだと笑う。 バイクで逃げるなら今の内だが、アンが転がるようにバイクから降りて、ヘルメットを脱ぐと、地面に嘔吐しだした。 何度もせき込みながら苦しそうに、胃の中の内容物を地面にぶちまけている。 「バイクはもう、無理そうだな」 哲郎が言うと、トモキは哲郎の左腕を取って、 「お前もな」 と言った。 血に濡れた左腕は、今はもう感覚がない。
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