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しかし観光寺の境内は、観光客の数もさることながら、学生の姿も異常に多い。
学生服にブレザー、タイにリボン。
多少の違いはあるものの、全体的には『黒』の印象で片付けられる、同じ衣服の集団が、そこここでたむろしている。
「今日は特別なミサの日なの?」
制服という概念がないらしいアンは、その光景に目を丸くしている。
「修学旅行か遠足だな。中坊ばっかか?」
トモキが、辺りを睨みつけるように確認しながら言った。
『爆音神』としてこの街で生きるトモキと哲郎には、学生の中にも敵は多い。
今回の敵とは比べものにならないくらいチャチな相手だが、今はそんな面倒なことに拘りあっている暇もない。
ところが、
「失礼っすけど、『爆音神』のトモキさんとテツローさんっすか?」
トモキたちの背後から、声がかかった。
しかも相手はひとりじゃない。
4人、いや5人か?
嫌な予感ほど当たるものだ。
アンを間に挟むようにして立っていたトモキと哲郎は、一気に拳を握って振り返る。
相手はまだ名乗りをあげる前だが、先手必勝、やったもん勝ちだ。
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