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アンはとたんにVIP待遇になった。
「その格好じゃ目立つっすね」
卓也の言葉に、幸一が学生の集団に向かって声をあげる。
「誰か女子! ジャージか容疑検査用のスカート貸せ」
服装こそ似たようなものの、概算30人以上の赤や黄色の頭をした、まるでハードロックのバンドメンバーのような集団の中に、いきなり放り込まれて、さすがのアンも最初はおどおどと脅えた。
だが、
「顔色悪いっすね? チャー、飲みますか?」
「転んだんですか? 今、女子、呼んできますから、傷の手当てとか着替えとか、何でも言ってください」
トモキや哲郎よりも、よっぽど紳士的な扱いをしてくれるこの集団に、すぐに慣れた。
それに格好こそ派手だが、よく顔を見れば、なるほど、まだ子どもの幼さが表情に残っている。
だから、
「なあ、この人が例のトモキさんのオンナなのか?」
と小声で噂されているのを耳にしても、子どもの戯言だと、右から左に聞き流した。
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