第5章 独立記念日

6/13
前へ
/92ページ
次へ
アンはとたんにVIP待遇になった。 「その格好じゃ目立つっすね」 卓也の言葉に、幸一が学生の集団に向かって声をあげる。 「誰か女子! ジャージか容疑検査用のスカート貸せ」 服装こそ似たようなものの、概算30人以上の赤や黄色の頭をした、まるでハードロックのバンドメンバーのような集団の中に、いきなり放り込まれて、さすがのアンも最初はおどおどと脅えた。 だが、 「顔色悪いっすね? チャー、飲みますか?」 「転んだんですか? 今、女子、呼んできますから、傷の手当てとか着替えとか、何でも言ってください」 トモキや哲郎よりも、よっぽど紳士的な扱いをしてくれるこの集団に、すぐに慣れた。 それに格好こそ派手だが、よく顔を見れば、なるほど、まだ子どもの幼さが表情に残っている。 だから、 「なあ、この人が例のトモキさんのオンナなのか?」 と小声で噂されているのを耳にしても、子どもの戯言だと、右から左に聞き流した。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加