第5章 独立記念日

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ミナミ他、この話を初めて聞くメンバーたちは、だったら、とゴクリと唾を飲む。 「爆音神の総長が下す、唯一究極の絶対命令が、じゃあ……」 「そう。過去にも何度か出されたが、いつもたったひとつだけだ。トモキさんのオンナ『アンを守れ!』これだけ」 そこで輪になっていた中学生たちは、バッと一斉にアンを振り返った。 確か高校生だと聞いているが、自分たちの中学校の制服、セーラー服を女子から借りて着ていても、まるで違和感のない金髪の女。 女子たちに髪を整えさせ、飲み物の給仕を受けながら、ベンチに悠然と腰掛けている。 アンのその態度は、人にかしずかれる生活が習慣になっているような余裕さえ窺えて……。 それは『爆音神』の総長が愛したオンナ。 最下層メンバーまで合わせると、果たして何人になるかわからない『爆音神』全体の、唯一絶対の『女神』にふさわしい姿だと、中学生たちは思った。 「おい……。ちょっと待てよ」 ひとりが、いま気がついたというように、恐る恐る声を絞り出した。 「もしもこの命令に、おれたちが失敗するようなことでもあったら……」 誰もそのことを予想しなかったのか、そこにいた全員が、いきなり冷や水をかけられたように、ゾッと背筋を震わせた。 卓也がハッと我に返ったように顔をあげる。 そして、 「おい誰か、四方に見張りたてろ。怪しいやつがいたら、すぐ報告だ」 と声をあげた。 幸一も、 「おい女子。お前らもいざとなったら盾んなってその人を守れ!」 と叫ぶ。 メンバーはきびきびと自分の仕事をするために動き始めた。
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