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やがて、二台の車で追撃してきたふたりの男に案内されるようにして、ひとりの黒いスーツの男が駐車場の方から歩いてきた。
黒いスーツの中のシャツも深い黒。タイは濃い紺だ。
そんな黒ずくめの男の後ろには、身長190センチの哲郎をも凌駕するガタイのいい大男が、ボディガード然として付き従っている。
あの黒スーツの男が、今回の件のボスなのだと、すぐにわかった。
歩いているだけで、周囲を圧倒するその存在感。
そして、その実力のほどが知れる無駄のない足の運び。
「あいつか――」
哲郎が何も言わなくても、トモキの野生の勘にも、それは引っかかった。
「……マズイな」
あのトモキが、強者を前にして、喜ばずに冷や汗を流す。
それは、道場で数々の手だれと対戦してきた哲郎も同じだった。
あの不気味な黒ずくめの男の実力は、哲郎の父親と同じか、いや、それ以上かもしれない……。
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