第6章 レイバーデー

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第6章 レイバーデー

結果的に、中学生は立派に時間稼ぎを務めた。 アンの周囲を警戒するあまり、中学生たちはこの寺で一番有名な庭園への入り口、庫裏の玄関の脇で、不自然なほど目立つ陣をひいて、かえって他の客からの人目をひいたのだ。 そして色とりどりの髪色をした、同じ制服を着た子どもの集団の中には、ちょっと関係のない大人は入り込めない。 とにかく目立つ上に、周囲からも注目されること間違いない。 集団で固まる中学生を横目に覗うようにして、観光客たちは彼らを避けて、庫裏の玄関へと進んでいく。 そしてそんな中に、黒いスーツの男たちもいた。 殺気など感じられるはずもない卓也たちでも、その男の背後に立つ、ひときわ身体の大きい、しかもサングラスなどかけた、まさに絵に描いたようなボディガード然とした体躯の男を目にすれば、それぞれが糸を張ったような緊張感を走らせる。 あれがトモキの言っていた、アンをつけ狙う敵かと、一斉に大男を注目した。 しかしその大男の前を歩く、どちらかというと小柄な、黒ずくめだが品のいいスーツを着た男の方が、卓也たちにまるで、 『警戒するな』 と言うように微笑みかける。 その笑顔には邪気がなく、中学生たちもつい虚をつかれ、思わずどこかのVIPが、お忍びで旅行に来たのかと解釈した。 男たちは、卓也たちの前を素通りして、庫裏の中へと吸い込まれていく。 やっぱりただの観光客だったのか、と中学生たちは息を吐いた。
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