13人が本棚に入れています
本棚に追加
第一級警戒態勢をとる卓也たちの前に、庫裏から靴を履いて出てきた黒いスーツの男が、ゆっくりと歩いてきた。
最初は4人で入っていったはずなのに、今はなぜかその男と大男のふたりしかいない。
黒いスーツの男は、今にも唸り声をあげそうな顔をする中学生たちに、親しげな笑みを浮かべて近づいてくる。
その顔は、ちょっと見惚れるほどにいい笑顔で、
「Excuse me?」
思わず毒気を抜かれたところに、英語で話しかけられて、卓也たちは何となく慌てふためいた。
ところが、
「アン王女はどこだい?」
続けて男の口から飛び出した日本語に、中学生たちは一斉に我に返ると、
「うるせぇ!」
と怒鳴って、一気に殴りかかっていった。
男が庫裏に入っていったすぐ後に、トモキと哲郎が息せき切って現れて、中学生たちに指示を与えたのだ。
「黒いスーツの男を足止めしろ。ただし無理はするな。ダメだと思ったら、迷わず全員が散れ」
『爆音神』の総長の言葉にしては、えらく弱気なものだったが、中学生たちはそれを過大解釈した。
なんたってあの、最強無敵のトモキからの直接の指示だ。
卓也たちは、つい張り切ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!