第6章 レイバーデー

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第一級警戒態勢をとる卓也たちの前に、庫裏から靴を履いて出てきた黒いスーツの男が、ゆっくりと歩いてきた。 最初は4人で入っていったはずなのに、今はなぜかその男と大男のふたりしかいない。 黒いスーツの男は、今にも唸り声をあげそうな顔をする中学生たちに、親しげな笑みを浮かべて近づいてくる。 その顔は、ちょっと見惚れるほどにいい笑顔で、 「Excuse me?」 思わず毒気を抜かれたところに、英語で話しかけられて、卓也たちは何となく慌てふためいた。 ところが、 「アン王女はどこだい?」 続けて男の口から飛び出した日本語に、中学生たちは一斉に我に返ると、 「うるせぇ!」 と怒鳴って、一気に殴りかかっていった。 男が庫裏に入っていったすぐ後に、トモキと哲郎が息せき切って現れて、中学生たちに指示を与えたのだ。 「黒いスーツの男を足止めしろ。ただし無理はするな。ダメだと思ったら、迷わず全員が散れ」 『爆音神』の総長の言葉にしては、えらく弱気なものだったが、中学生たちはそれを過大解釈した。 なんたってあの、最強無敵のトモキからの直接の指示だ。 卓也たちは、つい張り切ってしまった。
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