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第7章 コロンブス デー
「バカだな。照れるな」
そう言って、哲郎はアンにいきなり口づけた。
哲郎の腕の中で、アンの身体がギュッと固くなる。
哲郎の視界の隅で、黒いスーツの男がじっとこちらを見ている。
『頼む、このまま行ってくれ』
哲郎は思わず願ったが、その祈りも空しく、結局、男はクルリとこちらを向いてしまった。
哲郎は、強張ってしまったアンの身体を腕から解放すると、自分の後ろに隠すようにして押しやる。
トモキも、抱いていた女を放り出して、あっという間に、男と哲郎の間に、身体を割り込ませてきた。
「なかなか、おもしろいパフォーマンスだったよ」
男は拍手さえしそうな、満足げな表情でそう言った。
「ただ、王女さまには、少し刺激が強すぎたようだけどね」
キャスティングミスだとでも言うように、朗らかに笑った。
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