第7章 コロンブス デー

2/16
前へ
/92ページ
次へ
トモキは、男にいきなり蹴りを飛ばした。 先手必勝と言わんばかりに、戦いの空気が出来るその前に、必殺の一撃を繰り出す。 だが男は余裕の表情で、その蹴りを屈んでかわし、身を沈めると同時にトモキの軸足をつかんで、その巨体をひっくり返す。 トモキはとっさに頭の下に手をいれ、後頭部への衝撃を避けると、腹筋だけで跳ねあがり、間髪いれず強烈な右の拳を突き出した。 男は横にかわしてトモキに背中を向け、突き出されたトモキの腕をつかんで投げとばす。 トモキはゴロゴロと地面を転がり、与えられた衝撃を逃がしたが、 「っ痛ぇーー」 折り取られそうになった右肘を押さえて、眉をしかめた。 あのトモキが、あっという間に2回も転がされた。 哲郎はアンを押しやって、中学生の中に紛れているように指示した。 そして、立ちあがったトモキの脇に並んで立つ。 トモキひとりでは、対処できる相手ではない。 男はそれでも余裕の笑みを消さないまま、 「やはりこの国では、挨拶は拳で行うらしいね」 と言った。 「もっともそちらの彼は、足みたいだけど――」 男の言葉が終らない内に、トモキと哲郎、ふたりして何かをもらった。 目もくらむような衝撃をくらい、頬がねじ切られるような痛みにたたらを踏む。 早い! トモキは右の上段蹴り、哲郎は戻し蹴りの踵だ。 ――掛け蹴り。 ふたり揃って、一気に顔面を薙ぎ払われた。 「私も見習うことにするよ。虎的孩子?(虎の子どもたち)」 構えを作った男の身体から、圧倒されるような闘気が立ちのぼる。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加