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トモキは、男にいきなり蹴りを飛ばした。
先手必勝と言わんばかりに、戦いの空気が出来るその前に、必殺の一撃を繰り出す。
だが男は余裕の表情で、その蹴りを屈んでかわし、身を沈めると同時にトモキの軸足をつかんで、その巨体をひっくり返す。
トモキはとっさに頭の下に手をいれ、後頭部への衝撃を避けると、腹筋だけで跳ねあがり、間髪いれず強烈な右の拳を突き出した。
男は横にかわしてトモキに背中を向け、突き出されたトモキの腕をつかんで投げとばす。
トモキはゴロゴロと地面を転がり、与えられた衝撃を逃がしたが、
「っ痛ぇーー」
折り取られそうになった右肘を押さえて、眉をしかめた。
あのトモキが、あっという間に2回も転がされた。
哲郎はアンを押しやって、中学生の中に紛れているように指示した。
そして、立ちあがったトモキの脇に並んで立つ。
トモキひとりでは、対処できる相手ではない。
男はそれでも余裕の笑みを消さないまま、
「やはりこの国では、挨拶は拳で行うらしいね」
と言った。
「もっともそちらの彼は、足みたいだけど――」
男の言葉が終らない内に、トモキと哲郎、ふたりして何かをもらった。
目もくらむような衝撃をくらい、頬がねじ切られるような痛みにたたらを踏む。
早い!
トモキは右の上段蹴り、哲郎は戻し蹴りの踵だ。
――掛け蹴り。
ふたり揃って、一気に顔面を薙ぎ払われた。
「私も見習うことにするよ。虎的孩子?(虎の子どもたち)」
構えを作った男の身体から、圧倒されるような闘気が立ちのぼる。
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