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トモキの出したパンチが、男の左フックに叩き落とされ、その勢いをも利用した回し蹴りがトモキの横腹を襲う。
男の背後から右腕でつかみかかった哲郎は、後ろに突き出された男の肘を続けざまに二発もらい、ついでに足をひっかけられて倒された。
後ろ受け身してから、転がって男との距離をはかる。
こっちは一発も入れられないのに、赤子のようにふたりして転がされる。
「……まいったな、後ろにも目があるのか」
とっさに腹筋を締めたが、槍のような肘のダメージは大きい。
腹に蹴りをくらったトモキも、喉まで上がってきた胃の内容物をペッと吐きだして、腕で唇をぬぐった。
「隙なしかよ。人間か? おまえ」
愚痴を言っても状況は変わらない。
トモキが一気に駆け寄ると、閃光のような足払いを繰り出す。
体格はトモキと哲郎の方がでかい。
どちらかが男の身体を捕まえられれば、男の動きを制限できるかもしれない。
だが男は軽くその場でジャンプすると、トモキの伸ばした足を挟むように着地した。
そのまま捻りを加えて、トモキを転がす。
男が足元に気を取られているうちに、哲郎は男の胸元に掴みかかった。
前えりをつかまえた右拳で、同時に顔面への打撃と親指で目玉を潰しにいく。
「おもしろい攻撃をする」
男は言って、哲郎の拳を自分の手のひらで受けた。
そして浮いていた哲郎の親指を握ると、ためらいなく逆方に折った。
「グウッ!」
つい呻き声がもれたが、親指は最初からやるつもりだ。
相手と繋がっていること幸い、身体ごとぶつかるように突っ込んで、男の顔面に頭突きをお見舞いした。
「グハッ」
さすがにこれはもらってくれたが、男はとっさに哲郎の指を離して、後ろに飛んでダメージを減らしている。
肉を切らせても皮しか断てない。
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