第一章 ニューイヤーズデー

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スタンドをかけたままの背の高い自転車の後ろに、王女の脇を抱いて座らせる。 「なっ……」 絶句する王女にかまわず、トモキに、 「お前が漕ぐか?」 と聞くと、 「ふざけんな」 と毒づくので、 「そうか」 と答えて、一気にスタンドを蹴って、サドルにまたがり、ペダルを漕ぎだしだ。 「このクソバカ! テツおめー、なに先行ってんだよ! 待てよコラアッ!」 トモキが必死の形相で走って追いかけてくるのを見て、ようやく哲郎の溜飲も下がる。 「Hyaaaaa!」 悲鳴は万国共通なのか、えらく不格好な声をあげ、王女が後ろで振り落とされそうになっている。 哲郎は、右手を伸ばして王女の腕を捕まえ、それを自分の腰の辺りに導いてやりながら問うた。 「お前、名前は?」 王女は、 「Hyaaa……a。……アン」 と答えた。 哲郎は、その名にちょっと驚いたが、 「そうか」 とだけ短く返事をした。
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