13人が本棚に入れています
本棚に追加
次に男は、尻をついた哲郎につかつかと歩み寄ってきた。
無造作に右腕で哲郎の左肩をつかむ。
「ぐあぁぁぁっ!」
「やはり怪我をしていたね、フーデェァハイズー」
銃で撃たれた傷口に、容赦なく指を突っ込まれ、さすがの哲郎も悲鳴をあげる。
「負傷した身で私に一撃をくらわすなど、若いのにたいした才能だ。ご褒美に楽に殺してあげよう」
左手で哲郎の頭を押さえつけての、顔面への膝蹴り。
かろうじて右腕のカバーは間に合ったが、その腕ごと押し込まれる強烈な衝撃。
だが哲郎は吹っ飛ばなかった。
負傷している左手で、男の右の足首をつかんでいる。
「トモキッ!」
哲郎の合図と共に、トモキが脇から飛んできた。
男の左腰に、丸太のような足で回し蹴りを叩きこむ。
飛んで逃げようとするのは、哲郎の腕が許さない。
男はトモキの蹴りに飛ばされ、哲郎に引きずり落とされるように、地面に転がった。
すかさずトモキの踵落としが男の首を襲う。
男は身体を捻ってそれをかわした。
トモキの足が地を叩く。
男が身をかわしたところに、哲郎が待っていた。
男の背後から、首と片脇を通して、一本の腕も封じて極められる、片羽絞めをしかける。
だがスーツでは哲郎の握りが心もとない。
裸締めのように力づくでも絞めあげるが、とたんに男の足がはね上がった。
男の背中に張り付いていたはずの哲郎の顔面に、男のつま先がヒットする。
たまらず離れた。
最初のコメントを投稿しよう!