第一章 ニューイヤーズデー

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息をきらせてバイクを置いてある店まで走ってきたトモキは、 「ってめーテツ。はあ、ぶっ殺してやる、はあ、はあ」 舌を出したマヌケな顔をさらしている。 「情けないのね、これぐらいで」 アンが余計なことを言うので、トモキがキレる。 「てめぇ、このアマ。いい加減にしねぇと犯すぞ、オラァ」 「……パードン?」 どこまで本気なのかわからない。 「行くぞ」 放っておけば、いつまでも睨みあっていそうなふたりの間に、哲郎は身体を割り込ませ、お互いの視界を遮った。 するとトモキが、自分のヘルメットをアンに投げつけ、 「おめーはこっちだ」 と言った。 哲郎は驚いた。 トモキは自分のゼファーを誰にも触らせない。 それをタンデムシートに乗せようというのだから、 「何を考えてる?」 思わず聞いてしまう。 「あぁ? 何も考えちゃいねーよ。気の強ぇオンナは嫌いじゃねぇ」 トモキは獲物を狙う獰猛な目をして答えた。
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