中村、恋に落ちる

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唐突に恋に落ちた。 まさに恋は急転直下。青天の霹靂。 自分でも何がどうしてこうなったのかまったくもって意味は分からなかったが、この意味不明さが恋なのかもしれないと思うくらいには恋に落ちていた。 ちなみにそのお相手はと言えば、自分と同じ男で硬派なイケメンと評される人物だったわけだが。そこに何の疑問も持てないほど、俺は恋に恋をしてしまっていたのだ。 「と言うわけで俺と付き合って下さい! 刈谷くん!」 放課後の校舎裏と言う王道な告白スポットに呼び出した意中の相手・刈谷くんに俺は熱烈に愛を告げた。 顔を見るだけで心臓がばくばくと大変よろしくないリズムを刻んでいる。 あ、これヤバい。死ねる。 キラキラ見つめる先で、刈谷くんの男前なお顔はと言えば、大変地味に引きつっていらっしゃったけれども、俺の鼓動は止まらなかった。 「もう! 俺、自分でも訳分かんねぇんだけど、なんか三日くらい前から刈谷くんの顔見るだけでドキドキが止まらなくて、あ、これ恋だなって。これがいわゆる恋に落ちたってやつだなって! だから刈谷くん、俺と!」 俺と、付き合って! 下さい!  鼻息荒く詰め寄った俺をゴミ虫のごとく睥睨していた(だがそれもいい)刈谷くんだったが、「ん?」と微妙に表情を変えた。
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