第1章

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 命を賭し、そのリスクを孕んで手にした、勝価(しょうか)。  彼女はおそらく、自分の命より重い存在を手にしたところだ。  では、そろそろ物語を始めよう。左人差し指を置いていた「S」キーを、タン、と押した。  おおっと。3点リーダーは、2つで1つという原則の元の運用を私は推奨する。  正義とは、多数派に存在するから。 ◆◆◆ 「最悪だ……。この世の終わりだ……」  目の前に落ちている三角定規、宙を舞うヘッドフォン、身体にまとわりつく有刺鉄線、天井にぶら下がる天使、どこかに失った1分前の自分。  電子タブレットに表示された「YOU LOSE」とは、私の敗北を意味しており、向かい側に座る彼女には「YOU WIN」と表示されているはずだ。  この世には、勝ちと負けしかない。表裏一体とは他者に侵されることのない絶対領域であり、そこに真理はない。  引き分けとは、表と裏しかない直定規の、第3面を求めているのと同義であり、引き分けまでの過程に、世界は何一つ得をしない。  ついでに言えば、世界に住む誰一人も損をしない。
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