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最初に疑ったのは、全室に入ることのできるマスターキーを持っている寮母さんだ。でも寮母さんは誰からの信頼も厚いいい人だし、そもそも寮母歴何十年という人だから、手癖が悪かったりしたらとっくにクビになっていると思う。それに、万が一今になって魔が差したとしても、他の寮生の中にはもっといい品物を持っている子が何人もいる。狙うならそっちなんじゃないだろうか。
次に疑ったのは前に部屋を使っていた人だ。その人がこっそり合い鍵を作り、寮に忍び込めば部屋に入ることはできる。でも、確か聞いた話では、その人は寿退社をし、旦那さんの海外転勤にくっついて外国に旅立ったとか。…日本にいないのに泥棒はできないよね。
これ以外にも、前に部屋を借りていた人が合い鍵を作った。それを別の誰かが受け取り、盗みを働いているとか、プロの空き巣の仕業とか、色んな可能性は考えた。でもどれも決定的な証拠はないし、そもそも、なくなった品はどれも、金銭的にはまったくたいした物ではないのだ。いくら私の部屋に金目の物がなくても、わざわざ盗っていくのなら、もう少しマシな物を選ぶだろう。
考えすぎの気のせいだろうか。でもそれにしては、なくなった物の数が多過ぎる。
誰かに相談してみようか。でも、物が頻繁になくなるなんて言ったらきっと大きな騒ぎになってしまう。
もう少し様子を見て、絶対に盗られていると確信したら寮母さんに話してみよう。
そう決めたある日だった。
アイロンがけをした洗濯物を畳み、いつものように箪笥にしまった。
小さめだけど見た目が可愛くて気に云って流、備え付けの箪笥だ。
服や小物を所定の場所に収納しする。それから一時間程経って、タオル類をTシャツの段に入れたことに気づいた。
掃除とかはむしろずぼらなのに、こういうことだけきっちりしていないと我慢できない性格なので、すぐに入れ替えようと箪笥を開ける。
その瞬間、私は箪笥の中を見て固まった。
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