2017年5月

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かたつむり  豊かな感性を持っている。それはとてもすばらしいことだ。例えば花を見て、美しいと思えるということ。それだけで日々は彩られ、豊かなものになる。   だが、鋭すぎる感性は彼女の身を削り、その繊細な心を傷つけた。彼女はいつだって気にし過ぎてしまうのだ。美しい花、綺麗な星空、初めて見た景色、些細な悪口、小さな失敗、人の醜さ。彼女は苛まれ、自責の念に駆られるようになる。美しい世界で美しくないわたし。ねえ、どうしてわたしは生きながらえているのかしら。そのどうして、は致命的なまでに彼女を壊す刃となった。美しいものが怖い。綺麗なものが憎い。美しくない自分が何よりも嫌い。彼女はとうとう自らの世界に閉じこもり、かたつむりになってしまった。もう、何も怖くない。だって、殻の中なんですもの。  ただ、闇が彼女の繊細な感性を刺激もせず、柔らかに横たわる中で彼女はそっと目を閉じた。 テーマ「感性」
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