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何か拭く物はないかとポケットをまさぐると、あのハンカチが出てきた。
いつもこれだけは肌身離さず持っているんだ。
霞ちゃん……。
僕はそっと涙をぬぐう。
せめて人間だったら彼女を連れてどこまでも逃げただろうか。
どうせこのまま朽ち果てていくのなら、せめて僕は彼女の役に立ちたい。彼女を守りたい。
けれど人間モドキになった自分がいつ心まで無くなるのか僕はそれが一番怖かった。僕の体なんてどうなってもいい。ただ、彼女を守りたい。彼女の力になりたい。その気持だけは消えて欲しくない。
僕はその日一睡もできなかった。
何が彼女のためになるのか。僕は真剣に考えた。
そして彼女に手紙を書く事にした。
僕、あなたガ逃げるのを助ける。
人間お無線で呼ぶ。
待て。
まサお
手の指があちこち曲がっていて上手く書けなかったけど、ノートの切れ端に黒いマジックで書き、玄関の戸の隙間に挟んでおいた。
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