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人間を終了したはずなのに、僕の記憶の片隅で彼女の事がまだ残っていた。
どこからきたかもわからない得体の知れないやつらに襲われ、彼らがもつ病原菌に侵食されると人モドキになってしまうというパニックが起きてから、この世界は数年経つ。
最初の一週間は必死に家を要塞の如く固め、ガタガタと雨戸を開けようとする奴らの進入を許さない緊張の続く日々だった。
しかし長きに渡る疲労とちょっとした油断から、僕はとうとう"人モドキ"に噛みつかれてしまった。
徐々にこの身があいつらと同じになってしまう絶望感に苛まれながら、僕は世界が終わるのを待つことにした。
近所の人たちも、学校で嫌だった奴らもみんな「うーうー」と犬のように唸り、人を襲ったり意味不明な反復運動を繰り返すだけになってしまった。
僕の体も日々どす黒くなり、悲しいほどに脆く、腐っていっている。
しかし、一週間、二週間経ち、あれれ? と思った。
確かに僕の体は片足をびっこをひくような人モドキになってしまっている。
しかし頭の中だけは人間の時と変わらないのだ。
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