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僕は自分の部屋の窓を開け紅く光る月明かりを見ながら、玄関から出てきた霞ちゃんの綺麗な横顔を思い出していた。
不思議だな、僕の体は日に日に痺れて感覚が無くなっていっているのに、どうして彼女を思う気持ちは毎日どんどん大きくなっていくのだろう。
僕は硬くなってろくに回らなくなった首を体ごと傾け、この苦しみの正体を探った。
彼女の手にたった一度だけ触れたことがある。
林間学校に行ったときにキャンプファイヤーで炎を中心としてみんなで踊ったフォークダンス。コロブチカ。
僕は緊張してその時のことをほとんど覚えてないけれど
彼女と一瞬だけ、クルクルクルと踊ったんだ。
彼女はいつも腰に桃色の鈴をつけていて、それがその時も軽やかな音をさせた。
その瞬間僕はまるでお月さままで飛んでいったような気分になった。
ぼんやりと夜空を見ていたが、次第に月明かりが雲間に消え、星の瞬も薄れていく。
あたりの空気が湿ってきて冷たい空気に変わるとふわりと白い粉のようなものが降ってきた。
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