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小柄な女の身体は割りとあっさりとその場にひっくり返ったが、
男は女から顔を背けたまますぐに立ち上がり、その場から離れた。
やはり、女の顔を見るのはとてつもなく恐ろしい。
ドクンドクンドクン
ドクンドクンドクン
物体を人間だと認識した時から、
車のエンジン音しか無いこの静寂の暗闇の中で、
男の鼓動の音だけがやけにはっきりと男の耳に聴こえていたが、
その音が大きく、そして異常なほど速くなってきた。
恐くなった男は急いで車へと戻り運転席へと乗り込むと、すぐにバタンとドアを閉める。
十数秒間、車の座席で気持ちを落ち着かせてから、
車のギアをドライブへとチェンジした。
フロントガラスがひび割れていない右端の方へと顔を寄せ車を動かす。
何度か車を切り返し車の向きを180度反転させて、
ライトを倒れている女へと当てた。
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