79人が本棚に入れています
本棚に追加
《自殺》
そう
この若い女は死のうと思って
深夜、こんな場所にいたのではないだろうか。
死ぬ方法を模索して
こんな所をウロウロしていたのではないだろうか。
そこに遠くから近づいてくる車のライトの灯りを見つけ、
この女は咄嗟に
飛び込み自殺を図ったに違いない。
《この女は最初から
死ぬつもりだったのだ》
《そうだ!
そうに違いない!》
本当は女をはねた時
酒酔いによる睡魔が男を襲っていて
うつらうつらとしていた為、
女が本当に自分の車の前に飛び出したのかどうかも、
男はよく覚えてはいなかった。
ただ気づいた時には
人間らしきモノが車のフロントガラスに当たり
それと同時の鈍い衝撃と共に
ブレーキをめいいっぱい踏み込んでいたのだ。
実際のところをよく覚えていない男が、
女が自分の車に飛び込み自殺を図ったのだと
ほぼ断定的に思った背景には、
女を轢き殺したという罪悪感を
少しでも軽減したいという
男の心理が働いていた。
最初のコメントを投稿しよう!