地蔵

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男はギクッとして、 すぐさまその黒い影へと視線を向ける。 「何だ、地蔵か」 呟く男の視線の先にあったのは、 暗闇にポツンと佇む小さな地蔵であった。 いや、地蔵であろう。 曇天の為、月明かりも無く、 車のライトという光源がなければ、 まさしく真の闇になるであろうその場所では、 男の目には地蔵の姿は黒いシルエットとしてしか写らなかった。 地蔵であると男が認識したのは、 山間のこの道路の脇に小さな地蔵があることを、 朝の通勤の時に車中から見た記憶が頭の中にあったからだ。 地蔵は黒いシルエットで顔も全く判別できなかったが、 何故か、男はその地蔵にジーッと見られているような気がした。
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