13.受け継ぐ者よ

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 でも、その事に反論できるほどの威勢は無かった。今の修二には、自身の無力さしか頭にはないからだ。 「でも、澪はこうも言った」 「え……?」 「身体も、これからの人生も俺にあげる。でも、心まではあげられない。これはずっと、お前の物だからだってさ」 「澪……」 「俺には一番欲しい物はくれないそうだ。でも、それも頂くつもりだ。……この手術が終わったら」 「浅田さん……」 「だから、早く資料をよこせ。お前の持ってる物全て」  光成はそう言うと、勢いよく修二の襟元を掴み、睨め付ける。その眼差しはギラギラと滾り、欲しい物は全て手に入れると言っているようだった。 「手術は失敗するわけにはいかないんだ。俺が、澪を助ける」 「俺は……」 「お前は、俺が完璧なオペをして、それで助かる澪を外から見てろ」 「っ……」  ムカつく。腹が立つ。イライラする。  全て同じような事で、でも、その言葉が全て頭を埋めた。  でも、ここで何を言っても勝てない気がした。それに、執刀医を降ろされた自分に今できる事は、光成に今までの事を全て話す事しかない。  澪を助けたい気持ちは光成だって一緒だ。  ミスをしたら、澪の身体はそのまま終わりだ。  そんな結果、絶対にしてはならない。 「資料は……こちらです……」  受け継ぐ者へ、託す事しかできない修二。 (くそっ……)  修二は奥歯を噛み締めながら、光成の前に今までの経過や資料を置き、持ち場へと戻った。 「せ、先生!」  すると、看護婦が慌てて修二を呼びに来た。修二が担当していた倖が救急で運ばれて来るとの知らせだ。
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