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修二は、大きく深呼吸を二度して、澪が手術を受けている3号室へと入った。
「浅田先生! 早く、早く決断して下さい! このままじゃ、患者の身体が保ちません!」
「わっ、分かってんだよそんな事! ちょっと、待っててくれ!」
中は地獄絵図のように慌てふためき、焦りや危険が伴っていた。光成は、今の状況が起きるとは想定していなかったようで、顔が真っ青になっていた。
でも、それもそうかと修二は思った。
アクシデントがあったのか、光成の顔には血液が飛んでいた。
たぶん。澪の身体を開いた後に切った断面から思ってもいなかった方に血液が飛んだのだろう。
それも合わさり、光成はパニックに陥っているようだった。
それを見たからか、修二はなんだか不思議と冷静になっていった。
この状況をどうにかできるのは自分しかいない。そう、強く思ったからだ。
(俺しかいない。俺しか、澪を助ける事ができない……)
そう思った瞬間だった。
---修二……。
澪の声が聞こえた。
「俺が、お前を助ける」
その名前を呼ぶ声に修二はそう返し、混乱する光成に場所を退けるように指示をした。
「なっ! お、俺に指図するのか? 澪は俺が助け……」
「そんな事、言ってる場合じゃない」
「っ……」
「サポートお願いします」
「……分かったよ」
光成は悔しそうにそう言うと、修二に自分のポジションを譲り、反対側の助手のポジションへと移動して行った。
修二が来た瞬間、周りの人間は安堵したのか、冷静になったのが空気で感じた。
「澪、大丈夫だ。俺が助けてやる」
そう、澪の顔に向かって修二は言うと、今の状況を一通り見て、自分のする事を確認する。
そして、問題のドナーの心臓を見て驚いた。
思っていたよりも大きく鼓動を早くしている。そのせいで肥大し、澪の中に入らない。
(なんで、こんなに大きくなってるんだ……)
まさかの肥大化は、修二にとっても計算外だった。澪とマッチングしたのなら、血液型以外にも、大きさも同じくらいだと思っていた。いや、写真を見る限り同じだった。
これも一つの拒絶反応なのだろうか。
そう思った瞬間。聞いたことがあるような、でも、今は思い出せない声が修二の名前を呼んだ。
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