13.受け継ぐ者よ

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 澪の笑顔が見れる。そして、倖を助ける事ができる。  こんな素敵な等価交換はない。そう、修二は思った。 「ありがとうございます……」  でも、それは壱にとってプレッシャーになるのかもしれない。  今も素敵な絵を描いているのに、その価値を上げろと修二は言ってしまった。  そんな事、修二は一つも望んではいない。けれど、壱は修二のその言葉に、メラメラと燃えるような闘志が込み上げているように見えた。  もしかしたら、壱の何かを刺激したのかもしれない。それは、いい意味で。 「先生に買って貰ったその絵の価値を、倍以上にしてみせます。絶対に損はさせません」 「楽しみにしてます」  修二はそう言うと、壱に向かって右手を差し伸べた。そして、その手を壱がガシッと掴む。 「売買は成立ですね」 「はい。倖の事、よろしくお願いします」 「任せて下さい」  倖の命は絶対に助ける。  もう、不安なんてさせない。悲しい想いもさせない。倖が壱と、これから先、ずっと幸せな日々を過ごせるよう、自分ができる事を全て捧げる。  自分は医者だ。  人の命を助ける医者だ。 (そうだった……俺は医者だった……)  修二はこの時、自分が医者だと言う事を改めて感じた。  澪だけではなく、他にも自分を求め、助けを求めている人がたくさんいる。  そんな事、分かっていたはずなのに、頭の中はいつも澪の事だけだった。  だから、駄目なのだ。自分では、澪を助けてあげる事はできない。
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