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好きだ。
誰よりも、澪が。
(助けたかった……俺が……)
でも、それはできない。
澪にメスを入れる事が想像もできない。
修二は、点滴を受け眠る倖を見詰め、心の中で感謝を述べる。
倖のお陰で分かった。
澪が他の誰よりも別格で、修二が唯一、自身の手で助ける事ができない人物だという事を。
(でも……俺にはできない……)
修二は個室から出ると、歩き出す。そして、光成の元へと行くと、光成に澪の身体の事を全て話した。
たぶん、必要の無い話しの方が多いだろう。そこは心配をするような部分ではない。そう、光成に言われたが、修二は予測や万が一を見越して全てを話した。
自分ができる事を、してきた事を伝えたい。そう、思っての行動だった。
修二は伝え終えると身支度を整え、医院長の元へと行き、明日の休暇を申請した。
その申請は受理され、修二は明日、澪の側につきっきりでいる事を許された。
その事を伝える為、修二は澪の部屋に顔を出す。
「修二……」
澪は修二を待っていたかのように、修二の顔を見るとホッとした表情を向けてくれた。
その顔に、修二もホッとする。
「少しいいか?」
「うん。修二なら良いよ」
「そっか……俺なら良いのか」
「うん。修二ならいつでも来て良いよ」
澪はそう言うと、修二の方に左手を伸ばした。その手を修二はギュッと掴み、手を絡める。
「光成君から聞いたよ……修二、僕の執刀医じゃないんだってね……」
「あぁ……」
「まさか、光成君が手術するなんて。思っても無かった……。ずっと、修二だと思ってたから……」
「俺もそのつもりだった……」
「でも、それって修二にとったらとても酷な事をさせてるんだよね」
「え……?」
「僕、今まで考えて無かった。修二になら、全てを捧げられるって思ってたから」
「澪……」
「でも、それは今でも変わらない。僕、修二になら僕の全てをあげられる。身体も、心も、全て……」
光成には渡せない物。それを、修二だけが持つ事を許されている。
愛されているのだ。こんなにも愛おしい人に。
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