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何かがおかしい。
そう、胸騒ぎが起きた。
医者だから分かる。終わるはずの時間が来ない。
(なんで……まだなんだ……?)
スムーズに行けば、そろそろ終わってもいい時間のはずだ。なのに、赤いランプが消えない。
そう思ってから、更に一時間が経過した。
チラッと医院長を見ると、修二みたいに顔を青く染めていた。
やはり、何かがあった。違いない。
そう、確信を得た瞬間。オペ室から、看護婦が顔色を変え出て来た。
そして、胸を押さえ、修二の元へと来る。
修二は直ぐに立ち上がり、看護婦に詰め寄った。
「どうした!?」
「せ、先生……助けて下さい」
「なにがあった?」
「ドナーの心臓が、急に大きく鼓動を早くさせ、澪君の中に入らないんです。そのせいで、出血が酷く、血圧が低下し、浅田先生は冷静さを掛け、焦りを見せてます。このままじゃ、澪君も、ドナーの心臓も保ちません!」
「そ、んな……」
まさかの展開だった。
ドナーの心臓が、そんな事になるとは。
身体を開き、心臓が無いままの澪にとって、死に向かっているのと一緒だ。
修二は考えるよりも先に身体を動かし、走った。
後ろで医院長が、澪を助けてくれ、そう言っているのが聞こえたが、今の修二にはそれを応えるほどの余裕はなく、直ぐにオペ室へと向かい、手早く着替えた。
心臓が痛いくらい煩い。
(クソが……)
手だって震える。
震えている場合ではないのに。
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