13.受け継ぐ者よ

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 何かがおかしい。  そう、胸騒ぎが起きた。  医者だから分かる。終わるはずの時間が来ない。 (なんで……まだなんだ……?)  スムーズに行けば、そろそろ終わってもいい時間のはずだ。なのに、赤いランプが消えない。  そう思ってから、更に一時間が経過した。  チラッと医院長を見ると、修二みたいに顔を青く染めていた。  やはり、何かがあった。違いない。  そう、確信を得た瞬間。オペ室から、看護婦が顔色を変え出て来た。  そして、胸を押さえ、修二の元へと来る。  修二は直ぐに立ち上がり、看護婦に詰め寄った。 「どうした!?」 「せ、先生……助けて下さい」 「なにがあった?」 「ドナーの心臓が、急に大きく鼓動を早くさせ、澪君の中に入らないんです。そのせいで、出血が酷く、血圧が低下し、浅田先生は冷静さを掛け、焦りを見せてます。このままじゃ、澪君も、ドナーの心臓も保ちません!」 「そ、んな……」  まさかの展開だった。  ドナーの心臓が、そんな事になるとは。  身体を開き、心臓が無いままの澪にとって、死に向かっているのと一緒だ。  修二は考えるよりも先に身体を動かし、走った。  後ろで医院長が、澪を助けてくれ、そう言っているのが聞こえたが、今の修二にはそれを応えるほどの余裕はなく、直ぐにオペ室へと向かい、手早く着替えた。  心臓が痛いくらい煩い。 (クソが……)  手だって震える。  震えている場合ではないのに。
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