0.プロローグ

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 顔は笑みを浮かべるのに、小さい身体が恐怖に震え、助けを求めているようにしか見えない。それが苦しくて、とても遣る瀬無い。 (どうか、無事に終わりますように……)  何度も何度も心で唱えた。  神様、と何度も縋った。  そして、そっとその汗ばむ額にキスを落とし、色んな願いを込めた。  この心音がまた聞けますように。そう願い、修二は澪の身体を痛いくらい強く抱き締める。  けれど、耳に残るあの言葉はいつも消えない。 〝最後にぎゅっと抱きしめて〟  その言葉は、澪の笑顔を見るまでずっと、頭に残っていた。
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